「あいみちゃんは、恋ですか……」
「そうですね」

 夏休みを目前に控えた昼休み。
 学食の隅っこでカレーうどんを金山と啜っている。

「あいみちゃんって呼ぶのやめてよ。なんか気持ち悪い」
「気持ち悪いは言い過ぎじゃね?」

 内緒話をするように小さな声で話しながら、思わず溜息が出た。

「わぁ。恋する乙女だ」

 茶化す態度を改めようとしない金山が鬱陶しい。恨めしそうに金山を見ながら、カレーうどんに乗せられたコロッケを割る。

「そういえば、最近電話してないらしいじゃん。大輝が言ってた」
「あー、うん。テストも近いし」
「本当にそれが理由かなぁ」

 わざとらしく腕組みをして、金山は私をじっと見ている。

 大輝のことを好きだと自覚した日から、徐々に電話をすることが少なくなっていった。
 理由は、私からかけることが無くなったから。
 気軽にかけていたはずなのに、電話をかけるのに膨大な勇気が必要になってしまった。

 しばらくは大輝からかかってきていたが、それもなくなってしまった。

「もうすぐ夏休みじゃん。みんなでどっか行こうぜ」
「いいね。どこ?」
「海とか」

 同じようなペースで食べていたはずなのに、金山はいつのまにかカレーうどんを食べ終わってプリンの容器を開けている。