ガツ、ガツ、ガツ、ガツ、
  ガツ、ガツ、ガツ、ガツ、

「旨い。これは旨い!!」
 そう言いながら冒険者のジョヴァンニさんが、『ワンチュール』をかけたドッグフードを食べている。
 ごほ、ごほ、ごほ、
 しばらくするとむせ始めた。

 まあドライフードを、あんな勢いで食べればなるでしょうね。
 どうやら水の持ち合わせも無いみたいだわ。
 仕方がないわね。
 そう思いながら私はネットスーパーで天然水を購入して、ジョヴァンニさんに『サービスだから』と手渡した。
 あぁ、どんどん手持ちのお金が無くなっていく…。

「あ~、この水も旨いね。こんなに貴重な水をありがとう」
 ジョヴァンニさんに、そうお礼を言われた。
 私が不思議そうな顔をしていると、商人のヤルコビッチさんが私に教えてくれた。
 水は貴重で井戸や川で汲まないかぎり手に入らない。
 ましてこんな野営中なら、水分補給はできないそうだ。
 水道が無いと言うことか…。

 中世ヨーロッパの時代は、綺麗な水を手に入れることが困難だったと聞くわ。
 井戸は掘削機も無い手掘りだから、経済的に豊かな領主などに限られていたそうだけど。
 その時代と同じと言う訳か。


「あの~スズカさん」
 声をした方向に見ると、冒険者のイングヴェさんだった。
「犬族用の食事があるなら、猫族用のはありますか?」
 はい?
 そう言うイングヴェさんの帽子を取った頭を見ると、ここにも可愛い耳がチョコンと2つ。
 あぁ、猫族なのかしら?

「あ、はい、あります」
 なんだかもう、どうでもよくなった。
「では私にも猫族用の食事をお願いします。500円でいいでしょうか?」
 あ、そうですか…。
 私は自棄(やけ)になり大きな声で叫ぶ!!

「はい、猫ちゃんセット入りました~!!」

 そう言いながらネットスーパーで猫用の餌と、『ニャンチュール』を購入した。
 それをイングヴェさんのお皿に入れ、かき回せば出来上がり!!

「「へい、ニャンコスペシャル(猫の餌)お待ち~!!」」

「わぉっ!美味しそうな匂いだ」
 イングヴェさんが嬉しそうに食べ始める。

 ガツ、ガツ、ガツ、ガツ、
  ガツ、ガツ、ガツ、ガツ、

「旨い、旨い~」
 ごほ、ごほ、ごほ、
 はい、お水です。どうぞ。

 さて。私も食べようかな~!
 前に買っておいた『6枚切り食パン』の残りをストレージからだす。
 そしてネットスーパーで牛乳を購入する。
 パンと言えば牛乳だよね。

 ジ~~~~~~~~。
   ジ~~~~~~~~。
     ジ~~~~~~~~。

 どこかで虫が鳴いているのか?
 そう思ってふと見るとヤルコビッチさん、冒険者のゲオルギーさんとアレクサンデルさんの3人がこちらをジ~と見ている。
 どうしたのだろう?
 そこでふと思った。
 そう言えば私の外見はどうなっているのかしら?
 この世界に来てから体が若干、小さくなっているから若返っているのだと思うけど。鏡を見ていないから分からない。

 ま、まさか?!
 若い女の子がこんなところで男5人と、一夜を明かすこと自体おかしい。
 まして17歳のピチ、ピチになった私なら…。
 転移していきなり、こんなところで…。
 あぁ、もう駄目…。

 すると意を決したようにヤルコビッチさんが口を開く。

「スズカさんが食べているものはパンでしょうか?随分と柔らかそうですが?」
 な、なんだ。食べたいのは私ではなくパンだったのね。
 でも普通パンは柔らかいと思うけど。

「えぇ、パンです。パンは柔らかいものだと思いますけど…」
「それは違います」
 すると焚火の灯りにヤルコビッチさん達が、手に持っているパンが照らされる。
 あれ?黒いんですけど。

「スズカさんは良い暮らしをされてきたのですね。我々庶民が一般的に食べているのは、小麦ではなくライ麦から作られた硬い黒いこのパンなのです。小麦で作ったパンは高く庶民の口には中々入りません」
「そうなのですか。知らなくて…」
「いえ、別に責めている訳ではありませんので」
「はい、確かにこれはパンですけど」
「もし、手持ちに余裕があれば分けて頂けないでしょうか?」
「いいですよ」
 残りの枚数は3枚なので数が足りないわ。

 私はネットスーパーで再度、『6枚切り食パン』を購入した。
「はい、まずは1枚ずつどうぞ」
 そう言いながら、3人に1枚ずつ手渡す。
 でもそれだと以前買っておいた、イチゴジャムだけでは足りないかも?
 ジャムを見たら値段は200~600円だから、新たに買ってもいいか。
 ええい、どうとでもなれ!!
「ジャムはイチゴですが、ご希望ならハチミツ、ブルーベリーもありますよ」

「な、なんと?!」
「ジャムがあるのか?」
「ハチミツだと~!!」

 3人が口々に驚いている。
 いったいどうしたの?