秋の祭りまであと約1ヶ月半。
 すぐ国中におふれを出し、アレックスが魔王と戦う意志を発表すると、全国民の士気が上がる。我らが王様が立ち上がった。魔王と戦う覚悟を決めた。
 みんな恐怖はあった。去年、魔王が現れて街を破壊した場面を実際見ていて覚えているから、怖くて当たり前である。

 だけど戦わずして自分たちの大切な王様を失うのは、もっと愚かで恐ろしい話だと誰もが思っていた。それほどアレックスは誰からも愛されている。作戦会議とか視察とかアレックスも忙しい。そして私も剣の稽古が始まり、お城の作戦会議にも加わり何やら慌ただしくて……今はフレンドに泣かれている。

「ヒマな時間は必ずここで過ごすから」
 ごめんねーって、心を込めて言うのだけれど、首を横にブンブン振って、涙を流してドラゴンはイヤイヤしてる。
「フレンドの命もかかってるんだからね!」あまりにも泣くから、強気で言ってみると逆効果だったようで、泣きながらシュルシュル走って部屋の隅に行ってしまった。
 もう……どーすりゃいいんだ。フレンドのお世話係としてお城に置いてもらってたけど、私も色々と忙しくなって、お世話係を解任されてしまったのだ。

 それを話すと、フレンドの機嫌を損ねてスネて泣かれているのが今の状況だ。
 せっかく仲良くなったのにね、ごめんね。
「ご機嫌なおしてー」下からお願いするように声を出す私。この戦いに勝利したら、とことんボール遊びでも絵本読みでも、リクエストを何でも一緒に遊んであげるから。いや私、ずっとこの世界で過ごすつもりか?我に返って考えてるとジャックが急に現れて「リナ様。剣の稽古のお時間ですよ」と、呼びに来てくれた。私はジャックに困った顔をして、部屋の隅でメソメソしているドラゴンを指をさす。