「えーっと……あの……」
 気まずい、めちゃくちゃ気まずい空気がお宝部屋に漂っている。
「あのですね……」
 私は転んだままの体勢で、驚く3人と自分の手にある剣を交互に見る。
 
 いやどうして……抜けちゃったの?♪ちゃっちゃら~宮本里奈はレベルがひとつ高くなった。って、どうやら笑って終わらせる話じゃなさそうだ。アレックスは怖い顔で後ろを振り返り、人影が無いのを確認してから全員を瞬間移動した。私は剣を持ったままみんなと一緒に、一番最初に案内された部屋に移動した。あまりに慌てて移動したせいか、私は床に転んだまま着地してしまう。天井で天使がラッパを吹いている。こんな時だけど、天使のお尻が丸くて可愛いのを再確認した。

 心が切羽詰まっていると、現実逃避したくなる。

「リナ様」すぐ近くにいたシルフィンが手を伸ばしてくれたので、剣を持ったまま立ち上がる私。あらためて見ても、きらびやかな剣だ。
「リナが抜いたのかい?」
「ケガはないか?」
 私も衝撃だったけど、こちらの世界に住む2人にとっては、もっと衝撃だったみたい。
「うん……大丈夫だよ」転んでお尻を打ったぐらい。
「見せてほしい」アレックスが声を震わせて手を出すので、私はアレックスに剣を差し出した。アレックスは息を飲んで剣に触れると「うわっ」と、声を上げて剣を床に落とした。
「王様!」シルフィンとリアムは目の色を変えて、見えない敵からアレックスを防御しようとするけれど、アレックスは「すまない。小さな針のようなものを手のひらに受けた。気をつけるように」と苦笑いで自分の手から落ちた剣をジッと見つめていた。鏡のような光る刃にアレックスの真剣な顔が映り、今度はリアムが剣を拾おうとして手を伸ばすと、電流が通ったようなリアクションをして手を下ろした。それを見ていたシルフィンも挑戦したけれど「岩のように重くて持てません」と言って首を横に振る。

 どうなってるの?

「拾ってくれるかい?リナ」アレックスに言われ、私は床に落ちた剣を簡単に拾う。さっきまで持ってたぐらいだから、トゲトゲも付いてないし、電流もこないしすごく軽く持てる。
「やはり、リナは救世主だった」アレックスに感心したように言われてしまった。