奥まで進んで見つけたのは、ゴージャスな剣。
 それこそ金貨の山があり、その頂点にグサッと突き刺されてあった。
 何て綺麗な剣なんだろう。ゴールドの持ち手に宝石が輝き、半分見えてるシルバーの鋭い刃は鏡のようだ。近寄ってジッと見てるとシルフィンが説明してくれた。
「これは勇者の剣と言います。いままで誰もこれを引き抜いたものはおりません。どんなに魔法の力が強くても、力が強くても、王様でもリアム様でも騎士団でも街の者でも、誰も剣を引き抜く事ができない魔法の剣です」
 あーなるほど勇者あるあるだ。アーサ王伝説だ。剣を引き抜いた者は真実の勇者ってヤツだ。
「何百年もこの状態と聞いております。扉が開いた時に沢山の者が挑戦しますが、今年も誰も成功者はおりません。王様もリアム様も毎年挑戦しますが剣は抜けません」
 今年こそは成功させたかった。そんな悲しいリアムの気持ちが届きそう。
「城の象徴みたいなものです。王様がお呼びになってました、参りましょう」
「そうだね」
 私は軽くそう返事してから、刺さっている剣に引き寄せられるように手を伸ばす。

 なぜか妙に惹かれる。うっとりするぐらいの美しさで、触りたくてウズウズしちゃう。どうせ外れないからいいよね。シルフィンも私が手を伸ばしたのを見ても笑ってる。私も笑いながら剣を握り、ちょっとだけ力を入れると足元の金貨の山が崩れてしまい、そして私も崩れて見事に転ぶ。

「リナ様!」シルフィンが心配そうに駆け寄ってきたので、私は笑って「大丈夫」と返事をした。恥ずかしい。慣れないドレスで無理はできない。
「リナ様?」
 シルフィンの顔色が悪い。どうしたの?忙しかったから疲れが出たの?今日は早く寝たらいいよ。シルフィンもお疲れでしょう。

 シルフィンの口がアワアワして、かなり動揺していた。
 どうしたの?って思った時に右手に違和感。何か持ってるよ。あれ?って見下ろすと

 私は何百年も誰も抜いた事のない剣を抜き、手に握っていた。
 そして扉の向こうで
 アレックスとリアムが呆然と声もなく立ちすくんでいた。