俺様ドS騎士団長はうろたえた。顔が真っ赤になっているのは、太陽のせいじゃないだろう。
「えーっと……あの……」私は口ごもりながら慌てて外されたボタンを直し、転びそうになりながら流木に座り直す。
「あ……いや……その……」リアムは次の言葉が出ないで困ってる。真面目で不器用だから困ってるかもと、冷静に分析できるのは女の方だろう。かと言って、私も冷静になってるとは限らない。

 かなり焦った。いやどうしてこうなった?何もなかったことにして、普通にするのが一番かな。
「ジャックが呼んでるよ」明るく普通に言ったつもりだったのに、声が裏返っていた。恥ずかしい。遠くから聞こえるジャックの声が近くなる。今日は馬に乗って探してる。空からじゃなくてよかった。あんなキス見られたらどうなるのか。
「送ろうか?」
「散歩がてら歩くから大丈夫」
「わかった」
 それだけ会話して、私達は背中を向けて正反対に歩き出す。
 まだ心臓がドキドキしている。頬に手を当てながら自分に『落ち着け落ち着け』と繰り返す。キスなんて初めてじゃないし、アレックスにされたキスは凄かったけど、リアムとのキスはどこまでも甘くて、泣きたいくらい切なく感じた。