「今日、崩れた神殿に行きました」
「あそこの場所は景色が良い」
「素晴らしい景色でした」
「そうだろう」
 もっと深い話をしたいのだけど、アレックスは何も言わない。部外者に言う必要ないか。大人しく紅茶のおかわりをいただいていると「昔々の話をしていいかな」アレックスは私から目線を外し、窓から見える海を見つめていた。

 しばらくの沈黙が続き、私は焦らずアレックスの言葉を待つ。
 もし彼が話したくなかったら、もう二度と聞かないでおこう。そのくらいの気持ちでいると、アレックスは言葉を繋いだ。
「20年ほど昔の話。私とリアムが9歳の時、大きな戦いがあったのだよ」
 
 アレックスの物語が始まる。