迷いながら光の見える方に歩いて行くと、部屋から見た景色が広がっていた。朝の太陽とバラの香りを浴びて、手のひらを空に向け大きく背を伸ばす。あーっダメダメ。落ち込むと迷路にハマって動けなくなる。ダメダメ絶対ダメ。この異世界でひとりきり状態でそれはダメ。しっかりしなきゃ。

「頑張れ自分!」どっかの栄養剤のCMみたいな喝を入れ、大輪のバラに近寄り癒しパワーをもらう。
 作りものでもコロンでもない、自然に咲いてるいい香りは贅沢の極みだ。ピンクのバラから元気をもらおう。せめて魔法でも使えたらいいのに。
「えいっ!」気合を入れて白いペガサスの彫刻に集中すると
 なんと!ペガサスは彫刻からそのまま実物になり、空にまっすぐ飛んでいってしまった。
 あり?
 異世界飛ばされたら魔法使いになってた設定って……あり?自分に驚いてボーっとしてると「申し訳ありません。私がやりました」シルフィンがツインテールを揺らして、バラの後ろから登場した 。

 やっぱりねー。そんな簡単な問題じゃないよねー。納得しながら少しガッカリ。
「申し訳ありませんリナ様。余計な事をしました」恐縮しまくるシルフィンを見て私の方が恐縮する。
「違う違う。ごめんね大丈夫だよ」シルフィンに罪はない。うん自分の問題だ。空元気な私を察したのか、シルフィンはわざと元気な声を出す。
「王様のお話は終わりましたか。朝の散歩はどうでしょう?街をご案内いたします」
「お願いします」
 私も気分を変えたかったので、シルフィンの言葉が嬉しくて元気に返事をした。