「部屋に案内する」
「はい」付いていくしかないだろう。私は男のマントを被りながら、豪華な部屋を出る。
 これからどうなるんだろう。よくラノベで読む異世界に飛ばされたってヤツだよね。あぁもっと真剣にこの手の本を読んでおけばよかった、異世界ゼンゼンわからない。元の世界ってどうなってるんだろう。私が急にいなくなったことになってるのかな。お母さんや友達に心配かけてるかもしれない。今日の午後からの会議も……小さな出世の第一歩かもしれなかったのに……がっかり&不安で胸がいっぱい。

 トボトボと男の後ろを歩いていたら
「すまなかった」
 そんな静かな声が男から聞こえた。
「俺はお前の言った通り焦っていた。きつい言い方をして悪かった」
 落ちまくる私のテンションを自分のせいと思ったのか、救世主じゃなくてガッカリしたのかよくわからないけれど、男は私と同じテンションで私に謝る。
 お互い様か。
「私もごめんなさい」私も謝ると男はプイとまた正面に顔を向け、背筋を伸ばして前へと進む。
 騎士団長って鳥青年が言ってた。スラっとして男らしくて強くて、もしかしたらいい人かもしれない。
 すると男は急に足を止めて振り返り
「だからと言って、変な動きをしたら遠慮なく斬るぞ」上から目線でそう言った。

 前言撤回いい人じゃない。ただ顔がいいだけのドS男だ。

 あちこち歩きながら連れて行かれたのは、ひとり暮らしの私の部屋がふたつすっぽり入るくらいの大きさの客室。男が軽く手を叩くと天井のシャンデリアと大きなテーブルの上にあるランプに灯りが点く。壁は石づくりだけど天井が高くて窓がふたつあって、クローゼットとお姫様ベッドが見えた。映画で見たことのあるお姫様ベッド。ふんわりと天井から薄いベージュのシフォンがベッドを囲んでいる。
 なんて素敵なお部屋だろう。