ハロウィンの夜。
午後6時。シルフィンのミニライブを最初に見た公園の片隅で、私達は小さな輪を作っていた。
ここを集合場所にしているグループも多いのか、公園にお化けが溢れてる。
私とリアムは会社帰りの普通の服装をしているけれど、普通の服装の方が目立つくらいコスプレが多かった。だからシルバーを基調とした王族の正装をしたアレックスも、黒の騎士団の制服を着たジャックも、ゴズロリ風の黒の衣装のシルフィンも、向こうの世界で普通に着ている服装をしていたけれど目立ってはいない。ただフレンドだけがカボチャ色のマントをはおりオレンジのドレスを着てハロウィンっぽいコスプレをしていた。
長いまつげはドラゴンの時と同じだね。
フレンドは遊び疲れてジャックの腕の中で眠っている。私はフレンドの頬にキスをした。可愛いフレンド。そのまま強く優しい子に育ってね。
「騒がれるよりいいだろう」
アレックスが言い、リアムに向かって手を伸ばす。
「元気で」
「お前も」
固い握手をするふたり。言葉はそれしか交わさない。もう言葉はいらない二人だった。
「リアム様リナ様、お元気で」
爽やかジャックが声をかけてくれた。
「騎士団を頼むぞ」リアムに言われて背筋を伸ばした。きっといつの日か騎士団長になるだろう。勇気と優しさがあって、みんなに慕われる人だもの。頑張れジャック、シルフィンとの仲も頑張れ!
「ハグしていいですか?」
おそるおそるジャックが私に言うと、リアムは「ダメだ」と即答する。こんな時までからかうなんてかわいそうに。私はジャック抱かれているフレンドごと、自分から両手をいっぱい広げてハグをする。
「お幸せにリナ様」
「あなたもねジャック」やっぱりお別れは悲しい。