金曜日まで長かった。
 待つという行為がこんなに苦しいものなんて。どちらかといえばせっかちな私なので、世界中の時計が壊れたんじゃないかと思うほど長かった。今週の宮本里奈は間違いなく顔が怖かっただろう。申し訳ない。
 ジャックには何度もメールしたけれど返事なし。
 地下アイドルシルフィンを検索すれば、想像通りといえばいいのか、よくわからないけどマニアには大人気で、歌も踊りも上手くてファンにも神対応。地下アイドルとしては売れっ子で、そのうち地上に出る日も近いと言う話。ライブをよくやる地下劇場にも行ったけど、土曜の夜まで閉館で土曜のシルフィンのライブもチケット完売らしい。めちゃ売れてんじゃん!

 とにかく今日は金曜日。
 絶対絶対ぜーーったい!副社長待遇で登場するアレックスを捕まえて、全て語らせる。
 そしてリアムに会わせてもらう。
 愛する人に会わせてもらう。中指の銀の指輪にキスをして、しっかり心に誓う私。頑張ろう!魔王に勝った救世主だよ私は自信を持とう!覚悟しなさいアレックス!!!
 総務の自分の席で燃え上がっていたら、広報の同期から頼んでいた社内メールが届いた。【副社長は4時近くに来社予定】
 「よしっ!」デスクで声を上げて、周りに引かれる。本当にお騒がせしてごめんなさい。でも4時が勝負なのです、情緒不安定な私を許して下さい。

 ランチも食べず
 4時まで余計な事を考えたくなくて、仕事に集中。一気にやりすぎて、月末の仕事にまで手を出してしまった。まぁ……いい事だ。
 そして壁の時計は3時50分。総務でも部長、課長クラスがソワソワと動き出し重役フロアに移動していた。副社長であるアレックスのお出迎えなのだろう。一般社員ですが私も行かせて下さい。もちろんコソコソとね。
「ちょっと資料室に行ってきます」
 隣の席の先輩にそう言って席を外して、私も4時近くに重役フロアに紛れ込む。廊下に人がざわめいている、あちこちの部の課長クラス以上が集まり、副社長をお出迎えするのだろう。
 きっともう、このフロアのどこかにアレックスはいる。そして会議室に移動してみんなと顔合わせをするはず。社長も一緒だと思うからここで無茶な行動はできない。本当はアレックスの首を押さえて蹴りを入れたい気分だけれど、即クビになってしまう。今は目を合わせてアレックスの顔をじっくり見て、アレックスの焦り驚く顔をしっかりこの目でみてやろう。

 そして重役たちが解散して、ひとりになったところを捕まえる!
 絶対捕まえて説明させてやる!タラシの王様覚悟しなさい!背の高い観葉植物の後ろで怒りのオーラを出してたら、うちの課長に見つかってしまった。
「宮本さん?」
 しまった!怒りのオーラが目立ちすぎたかもしれない。