「九条君、大丈夫……?」

 ああ、彼女だ――

 理樹は思わず、僅かに目を細めた。込み上げた感情を抑え込み、それから、カーテンの内側にようやく入ってきたくれた彼女に声をかけた。

「情けないところを見せたな、すまん」
「ううん、疲れもあるからって、佐々木君は言っていたから」

 そう言って、沙羅は気遣うようにベッドのそばに置かれた椅子に腰かけて、足を揃えた太腿のうえに手を置いてこちらを見つめてきた。頬にかかった長い髪を片方の耳に掛けた際に、癖のない柔かな髪の一部が、さらりと音を立てて落ちた。

 理樹は「なぁ」と声をかけて、手の届く距離にいる彼女のほうへ手を伸ばした。様子を見ながら彼女が警戒していないあたりで手を止め、その位置をさりげなく確認してから、その手を下ろして問い掛けた。

「さっきの話は、まだ続行ってことでいいのか?」
「え…………?」
「俺もお前が好きだ――って言ったら、どうする?」

 数秒ほど保健室が静まり返った。