どうして出会ってしまったんだろう?と彼女は言った。
 俺だって、どうして彼女を選んでしまったのだろう、と思った。

 俺はひどい男だ。あのまま何しなければ、彼女は自分から愛する運命の人を見付けられたかもしれない。
 その別の誰かを選んでいれば、彼女はその男と愛する幸せな人生を送って、泣くこともない最高の幸せの中で、最期を迎えることが出来たのではないだろうか。

 そんな想いばかりが過ぎった。俺は、彼女の運命ではなかった、と。

 俺は自分のことしか考えていなくて、そうやって彼女を選んだのだ。彼女は優しい女性だったから、婚約者となった俺を愛する努力をして、そうやって一番目に想った誰かの次に愛してくれたのだろうか、と考えたりもしてしまう。

 どうして前世の記憶なんて戻ったのだろう。

 戻るのなら、時間を逆行させて欲しかった。
 どうせならゲームでよくある話のように、あのクソみたいな貴族の男が過ごした時間を遡り、記憶がある状態であの日に戻して欲しい。