五歳になった俺は、制服に身を包んで、金持ちや有名人の子供たちが多く通う幼稚園の入園式に臨んだ。

 兄たちのように「これがしたい」「あれがしたい」という熱意や欲求がなかったから、暇潰しがてらクソ面倒だが通うか――これ口にしたら、母が倒れて入園式どころじゃなくなりそうなので勿論口にはしていない――としか思っていなかった。


 物心付いた頃から、両親に連れられて金持ちのパーティーやら茶会やらには参加していたから、同じ年頃の子供たちが集まる場に緊張は覚えなかった。

 大抵の連中もみんなそうで、初対面だというのに、入園式が行われたホール会場にて、自分からにっこりと笑いかけて「はじめまして」とさらりと交流を持てるくらいには慣れている様子だった。

 俺は、愛想笑いというのがどうも苦手だ。両親や二人の兄たちと全く似ていなくて、威嚇するようなきつい目をしているとはよく言われた。