年頃なのに相変わらず子供っぽいというか、美人なだけに将来が物凄く心配だ。彼女の上の兄は結婚なんてしなくとも、と変わらずのシスコンっぷりだが、長男と両親は見合い結婚以外を望んでいた。

 見目や家柄ではなく、本当に心から彼女を愛してくれる人と幸せになって欲しい。互いを知らない仲での婚約なんてもってのほかだと、もう何十件の見合い話を断ったか分からない。

 メイドはそんな彼女の両親の親心と、恋人と真剣交際をスタートした社会人の長男の願いを思い返し、「お嬢様……」とつい涙ぐんで呟いた。

             ※※※

 なぜ「好きだ」と告白されるのか、まるで分からない。

 自分の魂があの頃と微塵にも変わっていないように、記憶がないとしても、やはり考えるたび今の状況は謎であると感じた。

 そもそも、時間をかけて過ごした後であれば分からなくもないが、出会った初見で「好き」となるだろうかと考えれば、理樹個人としては『NO』のような気もするのである。
 とはいえ、自分がそうであったというだけなので、見比べるには参考にもならないけれど。