「面白いよね、話を聞いてみたら、君はいつでも同じ台詞で彼女の告白を断っていることに僕は気が付いた。心に踏み込んで強制的に拒絶するような、そういったある種の言葉たちを、君は一度だって口にしたことがないんだ。それはどうしてかな?」

 西園寺がそう言って、ホイッスルをいじる手を止めた。

 形ばかり作った綺麗な微笑みのまま、西園寺が横目にピタリと視線を向けてくる。彼は眉一つ動かさない理樹を見て、手間のかかる後輩だとでも言うように小さく息をこぼした。

「予想以上に手強いなぁ、まぁ君たちの問題にとやかく言うつもりはないから安心してよ。相談くらいはいつでも乗ってあげる。――そもそも宮應君も、ああいったベタな感じのが好きだと言ってくれれば、早いうちから僕がいくらでもやってあげたのにねぇ」

 西園寺が、言いながら含むような眼差しを宮應の方へ向けた。それからこちらへと視線を戻し、にっこりと笑うと、秘密だよ、とでも伝えるように唇の前で人差し指を立てた。

 理樹は先程の、生徒会長と風紀委員長の短いやりとりを思い返した。どうやら生徒会長が動くたび、風紀委員長が動いているらしい理由は、この高校特有のしきたりや決まりといったものではないらしい。