「やれやれ、まさか君がそういう動きに出るとは思わなかったよ」

 話しを振られ、隣にいた生徒会長の宮應静が、秀麗な眉をきゅっと寄せた。

 彼とは対照的に、柔和さの全くない氷のような美貌を持った彼女は、自分と同じ身長の西園寺を冷やかに睨みつけた。

「面倒ならやらなければいいじゃない。私は、あなたにスターターを頼んだ覚えはないわよ。いつも思うのだけれど、どうして毎回あなたが来るのかしら?」
「あのね、君が動くと嫌でも僕のところに情報が上がってくるんだよ。学校の秩序と共に、生徒の安全を守るのも僕らの仕事なの」
「だからって、あなたが来る必要なんてないじゃないの」

 彼女が続けてそう言い、西園寺が「はぁ」と溜息をこぼした。

 この勝負については、昼休みの際に一気に全校生徒に広まったようで、沙羅を心配する声が圧倒的に多く、それはたった一時間の間に風紀委員会を動かすほどに発展した。
 この場所に教師や、煩く騒ぎ立てるような他学年の生徒などがいないのは、風紀委員長が腕っ節のある二人の風紀部員と、最強の新人である一年生の青崎レイを連れて、直々にやってきたせいでもある。