拓斗を除く周りの男子生徒たちが一斉に「九条ぉぉおおおおお!」と、叫んだ勢いで立ち上がった。

「ポーカーフェイスでやり過ごすかと思いきやストレートに答えるのかよ!」
「見損なったぞッ」

 女子生徒も小さな声で「見直しかけたのに、やっぱり九条も空気を読まない男子よね」「女の子への気遣いがまるでなってないわ」と小さな声で非難する。

 瞳を潤ませた沙羅が「うぅ、ごめんね」と言って、自身が持つクッキーが入っている袋を見下ろした。

「上手く焼けたのに、どうしてか味が全部違っちゃっていて」
「三枚目は食える味だが。この四枚目は、また激不味だな」
「うぅぅっ、ほんとに、ごめんなさ…………」
「なら食うんじゃねぇよ九条ぉぉぉおおおおおおおおおおお!」

 小さく肩を震わせて今にも泣きそうに言葉を詰まらせる沙羅を見て、木島を筆頭に男たちが額に青筋を立てた。

「これは俺の運を全てかけるしかないッ」
「桜羽さんの手作りクッキーを無駄にするものかッ」
「俺は当たりを引くまで食べるぞ!」