そんな声が聞こえて、ふっと意識が現実に引き戻された。理樹は一呼吸置いた後に「そうか」と相槌を打ち、瞬きと共に前世の情景を胸の奥に仕舞った。
すると、沙羅が袋の口部分を開けた菓子袋を両手でこちらに突き出して、勢いよく九十度のお辞儀をしてこう告げてきた。
「よければ食べてください!」
気のせいか、いつもの元気いっぱいの自信がその声にないように感じた。微かに震えている指先は、前世でもよく見た緊張感まで伝えてくる。
差し出された袋から覗くクッキーは、プレーンタイプだった。形は少々歪だが焦げてはいないし、一見してクッキーと分かる菓子に仕上がっていたのが意外だった。グループの女の子と作ったからなのか、日本人として生まれた『沙羅』が料理未経験者でないのかは分からない。
理樹は無言のまま、その中から一つ取り出して口に放り込んでみた。こちらを見ていた拓斗が「もう少し指で持っていてやろうぜ」と言い、周りの男子生徒が「もらったことを噛みしめるでもなく観察もろくにせず口に入れたぞ、あいつ」と呟く。
すると、沙羅が袋の口部分を開けた菓子袋を両手でこちらに突き出して、勢いよく九十度のお辞儀をしてこう告げてきた。
「よければ食べてください!」
気のせいか、いつもの元気いっぱいの自信がその声にないように感じた。微かに震えている指先は、前世でもよく見た緊張感まで伝えてくる。
差し出された袋から覗くクッキーは、プレーンタイプだった。形は少々歪だが焦げてはいないし、一見してクッキーと分かる菓子に仕上がっていたのが意外だった。グループの女の子と作ったからなのか、日本人として生まれた『沙羅』が料理未経験者でないのかは分からない。
理樹は無言のまま、その中から一つ取り出して口に放り込んでみた。こちらを見ていた拓斗が「もう少し指で持っていてやろうぜ」と言い、周りの男子生徒が「もらったことを噛みしめるでもなく観察もろくにせず口に入れたぞ、あいつ」と呟く。