僕はバーチャル空間に行く前に彼女の事を考えていた。あきらかに彼女と出逢ってから僕は変われた。生きていて何も感じなかった僕だか、最近は楽しいと感じることが多い。今日も彼女との待ち合わせに行くことが楽しみだ。僕にとって初めての感情だった。
 
 僕は彼女に恋をしている。

「ごめん、お待たせ」
 待ち合わせ場所に行き、待っていると彼女に声をかけられた。
「今きたところだよ」
「よかった。じゃあいこっか」
「今日はどこに行くの?」
「オーロラ! 落ち込んでる時とかによく見に行くんだ。リアルのオーロラは遠くて見に行けないからここで見てるの」
「浅倉さんも落ち込んだりするんだね」
「するよ! でもここにくると忘れることができるの」
 彼女に連れられた場所は確かにすごい所だった。もちろん僕はオーロラなんて見たことがなかった。確かに彼女の言う通りで、綺麗で心が落ち着く。しかし、それだけではなくやはり彼女と一緒だからこの景色もより一層輝いて見える。彼女は僕の人生を変えてくれた。
「浅倉さんありがとう」
「何が?」
「浅倉さんと出逢ってから毎日がすごく楽しいよ。小説読んでもらうためにたくさん書いたり、いろんな所に連れて行ってくれたり、以前の僕とは全然違うんだ。」
「そう言ってもらえて嬉しいな」
 彼女は少し照れくさそうに笑っている。そんな彼女がとても愛おしく思える。心臓の鼓動が早くなっているのが自分でもわかる。ここで彼女に想いを告げたいと素直に思った。
「浅倉さん。」
「どうしたの?」
「僕は君が好きだ。君といると何をしていても楽しく思える。これからも一緒にいてほしい」
 僕が彼女にそう告げると彼女は複雑な表情をしていた。嬉しさがあるようで少し悲しげなそんな表情だ。
「すごく嬉しいよ。でもごめん、私に恋愛をする資格なんてないの…」
「資格ってなに?」
「私が恋愛をすることは一生許されないの」
「分からないよ。人は自由に恋愛していいはずだ。」
「私人間じゃないの」
「え…」
 彼女の言葉の意味が全く理解できなかった。人間以外何がいると言うのだ。僕は返事ができずにいた。

「私、AIなの」

 彼女の言葉を聞いて頭の中が真っ白になった。