「あ! そろそろ家に帰らないとお母さんが心配するかも。コロが家から脱走したの僕のせいなんだ。散歩から帰った後、僕、庭の柵の扉閉めるの忘れちゃったんだ。それで黙ってコロを探しに行っちゃったから、ずいぶん散歩の時間かかってるなあって思われてるかも」
「ほんと?! それじゃあ早く帰らないとね」
私は急いで玄関を開けて、庭につながれていたコロを連れ出し、健太君にリードを渡した。健太君は意味ありげに笑った。
「絶対遊びに来るからね。その時はよろしくね、一之瀬おねえちゃん!」
曖昧に返事を返しながらも、困ったなあと思った。健太君に手を振りながら、健太君のお姉さんってどんな子なのだろうと思った。健太君が言ってた感じでは勝ち気そうなお姉さんみたいだったけど……。でもほら、ほんとに会うかどうかもまだ分からないし。それに健太君がそう言ったからと言っても、私だって大学の授業があるのだ。時間が合わなきゃ、健太君とコロとだって、もう会うことがないかもしれないのだ。そう考えると、胸の中が少しだけ穏やかになった。ともかく今は目の前の課題と授業に集中しよう。そう、心に誓いつつも、私は居間に戻ると、さっきのアリスの写真に目が留まった。
アリスのことなんて、すっかり忘れてたなあ。いつのまにか古ぼけてしまったアリスの写真を改めて見るうちに、昔のことがつい最近のように思い出されてきた。
「ほんと?! それじゃあ早く帰らないとね」
私は急いで玄関を開けて、庭につながれていたコロを連れ出し、健太君にリードを渡した。健太君は意味ありげに笑った。
「絶対遊びに来るからね。その時はよろしくね、一之瀬おねえちゃん!」
曖昧に返事を返しながらも、困ったなあと思った。健太君に手を振りながら、健太君のお姉さんってどんな子なのだろうと思った。健太君が言ってた感じでは勝ち気そうなお姉さんみたいだったけど……。でもほら、ほんとに会うかどうかもまだ分からないし。それに健太君がそう言ったからと言っても、私だって大学の授業があるのだ。時間が合わなきゃ、健太君とコロとだって、もう会うことがないかもしれないのだ。そう考えると、胸の中が少しだけ穏やかになった。ともかく今は目の前の課題と授業に集中しよう。そう、心に誓いつつも、私は居間に戻ると、さっきのアリスの写真に目が留まった。
アリスのことなんて、すっかり忘れてたなあ。いつのまにか古ぼけてしまったアリスの写真を改めて見るうちに、昔のことがつい最近のように思い出されてきた。