「ねえねえ、なんでアリスっていう名前にしたの?」
健太君に訊かれて、私は一気に現実に戻された。
「それなら、コロはなんでコロなの?」
私も私で疑問に思っていたことを訊いてみた。
「コロは子犬の頃、ものすごくコロコロしてたから、そういう名前にしたんだよ」
健太君は屈託なく笑うとそう言った。
「さあ次はおねえちゃんの番だよ」
くりくりした大きな目で健太君は私を見つめた。
「アリスっていう名前は不思議の国のアリスからとったの」
「あの本の?」
「そう、本の不思議の国のアリス。私は本の内容よりも、本の挿し絵が好きで、私もこういう絵が描きたいと思ったの。初めての絵のモデルが親がもらってきてくれたミックス犬だったってわけ。だからアリスって私が名づけたの。アリスを見て、何度も絵を描いたのよ。アリスのおかげで画家への道を考えるようになったの」
私が熱心にしゃべると、健太君は、すっとんきょうな声を出した。
「へえ! なんかすごいね。僕なんかただ見たまんまつけただけなのに。やっぱり画家になる人はなんか違うんだね」
感心して言う健太君を私は慌てて制した。
「違う違う、まだ画家になっていないの。私は単なる美大生なだけ」
「だって、美大生って画家になるために行くんでしょ。僕のお姉ちゃんは絶対画家になってやる! ってものすごくうるさいんだよ」
「ものすごくうるさいの?」
「うん、親がすんごく反対してるんだ。画家になんかなっても食っていけない、今からでも遅くないから、普通の大学に行け! って毎日ケンカだもん。僕ほんと嫌になっちゃうよ」
「ご両親反対なのね」
「うん、そうなんだ。ねえ、今度僕のお姉ちゃんに会ってくれない。きっと喜ぶと思うんだ」
ぱっと笑顔になって健太君はそう言ったけれども、私の胸の内は複雑だった。大いなる期待を持っている高校生と会うのは、とても気が引けた。
「う~ん、でも私なんかと会っても意味ないんじゃないかな」
「そんなことないよ。自分の行きたい学校の先輩に会えるんだもん。きっと、うちのお姉ちゃん喜ぶよ。一之瀬おねえちゃんが駄目だって言っても、僕お姉ちゃん連れて遊びに来ちゃうよ」
「え、でも」
健太君に訊かれて、私は一気に現実に戻された。
「それなら、コロはなんでコロなの?」
私も私で疑問に思っていたことを訊いてみた。
「コロは子犬の頃、ものすごくコロコロしてたから、そういう名前にしたんだよ」
健太君は屈託なく笑うとそう言った。
「さあ次はおねえちゃんの番だよ」
くりくりした大きな目で健太君は私を見つめた。
「アリスっていう名前は不思議の国のアリスからとったの」
「あの本の?」
「そう、本の不思議の国のアリス。私は本の内容よりも、本の挿し絵が好きで、私もこういう絵が描きたいと思ったの。初めての絵のモデルが親がもらってきてくれたミックス犬だったってわけ。だからアリスって私が名づけたの。アリスを見て、何度も絵を描いたのよ。アリスのおかげで画家への道を考えるようになったの」
私が熱心にしゃべると、健太君は、すっとんきょうな声を出した。
「へえ! なんかすごいね。僕なんかただ見たまんまつけただけなのに。やっぱり画家になる人はなんか違うんだね」
感心して言う健太君を私は慌てて制した。
「違う違う、まだ画家になっていないの。私は単なる美大生なだけ」
「だって、美大生って画家になるために行くんでしょ。僕のお姉ちゃんは絶対画家になってやる! ってものすごくうるさいんだよ」
「ものすごくうるさいの?」
「うん、親がすんごく反対してるんだ。画家になんかなっても食っていけない、今からでも遅くないから、普通の大学に行け! って毎日ケンカだもん。僕ほんと嫌になっちゃうよ」
「ご両親反対なのね」
「うん、そうなんだ。ねえ、今度僕のお姉ちゃんに会ってくれない。きっと喜ぶと思うんだ」
ぱっと笑顔になって健太君はそう言ったけれども、私の胸の内は複雑だった。大いなる期待を持っている高校生と会うのは、とても気が引けた。
「う~ん、でも私なんかと会っても意味ないんじゃないかな」
「そんなことないよ。自分の行きたい学校の先輩に会えるんだもん。きっと、うちのお姉ちゃん喜ぶよ。一之瀬おねえちゃんが駄目だって言っても、僕お姉ちゃん連れて遊びに来ちゃうよ」
「え、でも」