夢見る気持ち

次の日は学校だったけれど、結局休んでしまった。泣きすぎて目が腫れあがってしまったこともあったけれど、アリスを火葬にするというので、ついて行ってあげたかった。これでアリスの姿を見るのも最後。アリスが火葬に付される前に、母はアリスの毛を一房とっておいてくれた。
「これはアリスの形見だから、あとで持ち歩けるように小さな袋を作ってそこに入れてあげるね」
母も涙目になりながら、私にそう言ってくれた。私はうんうん、うなずきながらも、また泣いてしまった。父は仕事だったので、母と二人でアリスを火葬し、アリスの骨を拾って骨壺に収めた。柔らかい毛並みも、かわいいたれた耳も、笑っているようなつぶらな瞳も、あっというまに消えてしまい、残ったのは白い骨だけだった。昨日まではあったアリスの身体は永遠に失われてしまった。そしてようやく私は理解した。アリスが本当に亡くなってしまったということを。
 理恵には、火葬した次の日に、学校に行って、アリスが亡くなったことを伝えた。あまりにも突然のことだったので、理恵も、びっくりして言葉を失っていた。それから少しずつ悲しみがやってきて、理恵も涙を流した。私達二人は、学校帰りに、アリスのことを話しながら、泣いて家へと帰った。
 アリスの存在は、とても大きかった。家へ帰ると、必ず玄関まで迎えに来てくれたアリス。いつもアリスが座っていたソファには、アリスの毛の残りが、少しだけついていた。それを見る度に、私の心の中は孤独に襲われた。ぽっかりと空いてしまった心の穴を埋めるのは、至難の技だった。もうアリスはいないのだと思うと、また涙がこみあげてくる。その繰り返しだった。学校でも、アリスのことを考えて、とたんに泣き出すことも、しばしだった。
 そんな私に、理恵は心配そうな目を向けた。
「大丈夫だよ」
と、私は平気な風を装ったけれど、それは噓だった。ちっとも大丈夫ではなくて、風邪だと偽って、学校を休むこともあった。アリスが私に与えた悲しみは、とても大きなものだった。けれどもそれ以上に、学校帰りに心配して、うちまでやってきてくれた理恵の気持ちもまた大きなものだった。友達っていいなあ。悲しみにくれながらも、そう思った自分がいた。そして今も、理恵は変わらぬ瞳を向けてくれている。それはアリス以上にとても大事なことで、これから先も変わらないことを、私は願った。