夢見る気持ち

次の日、理恵は約束通り、先生のところに一緒に行ってくれた。先生は無惨な本の姿を見て、あららといった表情をした。
「こういうことは、困るのよね。ワンちゃんのしつけがなってないのね。一之瀬さんが、飼い主さんなんでしょ。しっかりしつけをするか、それか本はワンちゃんの見えないところに置くべきね」
理恵と同じようなことを言われ、私はうなだれた。先生も困った様子だったが、
「この本はなんとかするから、もう教室に戻っていいわよ」
と言ってくれた。ものすごく怒られるかと思ったが、そうでもなかったので、内心ほっとした。
「理恵ちゃん、一緒に行ってくれて、ありがとう」
昨日のこともあって、私はちょっと気まずそうにお礼を言った。理恵は、全く気にしてないようで、
「よかったね」
と一言笑顔で答えてくれた。
いつも私と理恵とアリスは一緒にいる仲間だと思っていたけれど、あの時は、ちょっと違った。アリスと理恵は寄り添っているけど、私だけ仲間はずれのような気がした。私の方がアリスのことはよく分かっていると思っていたけれど、違ったことが、なんとなく悔しかった。
そんな理恵も、今ではアリスのことなど、すっかり忘れてしまっているような気がする。飼っていた私だって、ここに写真が飾ってあったことも気づかなかったぐらいなのだ。当たり前といえば、当たり前のことなのだ。それでもさっき理恵に心配そうな目を向けられた時、アリスが亡くなった時のことをふと思い出した。