理恵は、桜の姫の他にも、色とりどりのカクテルを勧めてきた。赤、黄色、オレンジ、ブルー。これもあれもというまに、飲んでいくうちにほろ酔い気分になってきた。理恵が仕事の愚痴をこぼし、成美がどんな仕事がしたいかを打ち明け、OBの情報をいかにゲットしたかについて、得意満面に語っていくうちに、今度は私も何か話すことはないのかとお鉢が回ってきた。
それで私は、酔っているせいか上機嫌になって、昔飼っていた犬アリスに、そっくりな犬に出会ったことと、まだ高校生だけれども絵の力量が半端ない少女に出会ったことを話した。
「桃子よりも、うまい子ってどんな子なのよ。桃子の絵の方が絶対うまいに決まってるよ!」
なぜか怒った調子で、成美は言い切った。そりゃ、成美は実際の彼女の絵を見ていないからそんなこと言えるんだよと、心の中で私は思った。
「絵のうまい桃子がうまいって言うぐらいなんだから、きっとよっぽどうまいんだね」
美味しそうにカクテルを飲んでいる理恵は、私に賛同しながらもそれほど興味を持っているような口調でもなかった。高校時代の頃の理恵だったら身を乗り出して私のしゃべったことについて、いろんな意見を言ったに違いない。それなのに今は、うっすらと笑みを浮かべながら、私達の話に適当に相づちを打っているような気がした。
なんだか冷たいなあ、理恵。そう思っていると、とたんに理恵が小声で話し始めた。
「あのね、私ね」
「なあに?」
成美もそれに合わせるように内緒話のように耳を傾け、小声で訊いてきた。
「私彼氏ができたの」
「えっ、マジでっ!」
成美が絶叫するのと同時に私もびっくりして、思わず訊き返した。
「それ、本当なの? 理恵」
「うん!」
なんだかとても嬉しそうに返事をする理恵に私は、なんと言ったらよいかわからなかった。成美はすぐさま
「抜け駆けずるいよ! 理恵」
と言いながらも手に持っているカクテルを掲げて言った。
「理恵の幸せを祈って乾杯!!」
私も慌ててグラスを掲げて、二人のグラスにかち合わせた。私は少しの間をおいてから理恵に言った。
「よかったね」
ぽつんと言った私の言葉にも、理恵は満面の笑みで答えてくれた。
「ありがとう」
友達が幸せになることはいいことだとは思うけれど、なんだか自分の世界とは違いすぎて、ついていけない自分がいた。
それで私は、酔っているせいか上機嫌になって、昔飼っていた犬アリスに、そっくりな犬に出会ったことと、まだ高校生だけれども絵の力量が半端ない少女に出会ったことを話した。
「桃子よりも、うまい子ってどんな子なのよ。桃子の絵の方が絶対うまいに決まってるよ!」
なぜか怒った調子で、成美は言い切った。そりゃ、成美は実際の彼女の絵を見ていないからそんなこと言えるんだよと、心の中で私は思った。
「絵のうまい桃子がうまいって言うぐらいなんだから、きっとよっぽどうまいんだね」
美味しそうにカクテルを飲んでいる理恵は、私に賛同しながらもそれほど興味を持っているような口調でもなかった。高校時代の頃の理恵だったら身を乗り出して私のしゃべったことについて、いろんな意見を言ったに違いない。それなのに今は、うっすらと笑みを浮かべながら、私達の話に適当に相づちを打っているような気がした。
なんだか冷たいなあ、理恵。そう思っていると、とたんに理恵が小声で話し始めた。
「あのね、私ね」
「なあに?」
成美もそれに合わせるように内緒話のように耳を傾け、小声で訊いてきた。
「私彼氏ができたの」
「えっ、マジでっ!」
成美が絶叫するのと同時に私もびっくりして、思わず訊き返した。
「それ、本当なの? 理恵」
「うん!」
なんだかとても嬉しそうに返事をする理恵に私は、なんと言ったらよいかわからなかった。成美はすぐさま
「抜け駆けずるいよ! 理恵」
と言いながらも手に持っているカクテルを掲げて言った。
「理恵の幸せを祈って乾杯!!」
私も慌ててグラスを掲げて、二人のグラスにかち合わせた。私は少しの間をおいてから理恵に言った。
「よかったね」
ぽつんと言った私の言葉にも、理恵は満面の笑みで答えてくれた。
「ありがとう」
友達が幸せになることはいいことだとは思うけれど、なんだか自分の世界とは違いすぎて、ついていけない自分がいた。


