「ふふ、アンジェリカ……こうやって君に触れ君を感じられる事が本当に幸福で仕方無いよ。その花嫁衣装だって本当によく似合っているよ、君を想いながら俺がデザインしたから当然なんだけどね。ああでも、他の誰にも見せたくなかったな、こんなにも美しく可憐な君の姿は……」

 誰、この人は!? 
 わたくしが事務的な手紙のやり取りをしていた方は誰だったんですの?! 少なくともあの文面からはこんな感じの人だとは分からなかったのだけど!! 
 それにっ、貴方はわたくしではなく妹に一目惚れして結婚を申し出てきたのではなくて?! ……いや、そうだとしたらわたくしが結婚しますと返事をした時点でこの話が白紙になっていてもおかしくない。
 本当に、どうしてこの御方はわたくしと結婚したの…………??

「結婚初夜は君の元で、思っていたけれど……駄目だな、いざ結婚すると思っていたよりもずっと独り占めしたくなる。今すぐにでも領地に連れて行って一晩と言わずにずっと君を沢山愛したい」

 一晩と言わずに!?
 わ、わたくしは妹と違って男性との経験など微塵も無いのであまり良くは知りませんが、それって話に聞く絶倫というものなのではなくて?! わたくし、見ての通りまだ処女ですのよ、貴方のような女性経験が豊富そうな整った顔の男性の相手など務まりませんわ!!

「……ん? どうしたんだい、そんな風に愛らしい瞳で俺を見上げて……相変わらず君は可愛いね。ふふ、君が他の誰かのものになってなくて本当に良かったよ。まあ、そんな事は誰にもさせなかったけどね」

 もしかして、わたくしじゃない誰かが実はいたりします!?
 さっきから一人で延々と喋り続けてて怖いですわこの御方! 不定期に何やら恐ろしい事を口走っていらっしゃるし!!
 わたくしこれからこの御方と夫婦としてやっていけるのかしら……? 相手方どのような方でも愛する努力はすると決めていたものの、何だかちょっと不安になってきましたわ。
 そもそも、わたくしがいつ愛らしい瞳で貴方を見上げたのですか……どちらかと言えば恐怖ですのに。どうして貴方はそんな恍惚とした表情をしているのですか本当に怖い!!