そうではないだろう。
でもあれ――俺が見たところ――真紅を殺しかけていた傷が問題だった。
普通の刃物ではない。
人間によるものではない。
傷にまとわりついていた妖気(ようき)がそれを教えた。
ならば俺たちと同じ、妖異怪異の類(たぐい)か。
……いや、それともどこか違う。完全な妖気ではなく、若干人間の持つ霊力の波動も感じていた。人間と妖異が混じった存在? そんなのは数多(あまた)といる。
人間を傷つけるだけの妖異怪異は存在しない。
それ相応の理由があって、人間を害する。
それ相応の理由がないと、妖異怪異は人間に危害を加える発想がない。
この世の理(ことわり)のようなものだ。
前提、人間に認知され、存在するのが妖異怪異であるから。
……もうあんな目に遭わなきゃいいけど。
真紅を傷つけたもの、調べよう。
最期の時に手を握っていると約束した。
だからその時は出来るだけ――未来(さき)の方がいい。
真紅の子供とか、見てみたい。
絶対、可愛い。
……俺、相当変か?
自分との間の子でなくても、真紅の子であるというだけで絶対可愛がれる自信がある。
……まあ、遠くから見守ることは出来ても、傍にいくことはないんだけど。
真紅に似た子供だったらいいなー、と、にやける顔を見られていたことには気づかなかった。