微笑む縁さんを見て、頭の中で唸った。

昨日――今朝か?――逢った白ちゃんの式である天音さんは現代には添わない出で立ちだったからすぐに式――人間ではないと納得できたけど、縁さんはモデルさんくらいやっていそうな女子大生にしか見えないので、認識が困る。

「どうぞ中へ。黒藤が待ってます」

縁さんに先導されて、まだ認識が困っている私とママは小さ目の日本家屋に入った。一人――いや、二人か三人?――で暮らすには問題なさそうな広さだ。

「黒藤。お二人がいらしたわよ」

玄関から縁さんが呼びかけると、着流し姿の黒藤さんが顔を見せた。

「ああ。紅亜様、真紅、わざわざすみません」

「いいえ。黒ちゃんに逢えるの久しぶりだから嬉しいわ」

ママは甥っ子に向けて破顔する。

「そう言っていただけるとありがたいです。こちらこそ、旦那様と別れられたあとに何も出来ずに申し訳ありませんでした」

「いいわよ、そんなの。その頃にはもうお父様も亡くなっていたし、紅緒も眠っていたのだから、私が本家と顔見知りになってるって知ってる人いなかったでしょうから」

「ですが、俺は憶えているべきでした。――どうぞ。今日お呼びしたのは、見ていただきたいものがあるからなんです」

悔恨の顔をする黒藤さん。黒藤さんは私より一歳年上だというから、紅緒さんが眠るまでの一年はママとも逢っていたようだ。