あっという間に二学期の期末テストも終わり、高校二年目の冬休みに突入しようとしていた。一方瑞季の通っている通信制の高校ももう冬休みに入るそうだ。この間の手紙でそう言っていた。毎月送ってくる花の写真も、だんだんと冬の花の写真に変わっていた。病院の中庭にたくさんの種類の花が咲いているのだそう。今日届いた手紙の中の写真には、プリムラ、という花が写っていた。
『拝啓 巡様。クリスマスイルミネーションに一年の終わりを感じる今日この頃ですが、いかがお過ごしですか?
今日は、いいことがあったんだ!病院から一日だけ外出許可が出たから、お姉ちゃんと一緒にテーマパークで遊んだ!今月はその写真も入れときます。ねえ、巡くん。こんなこと、書きたくもないんだけど、あと半年ないんだよね。やっぱり、会いには来てくれないかな。
自分から行こうかとか、思ったんだけど、なかなか頻繁には出られなくて。今日外出しちゃったから、次はもういつになるか分かんないなあ。そろそろ会いに来てくれると嬉しいです。なんて、ごめんね。わがまま言っちゃって。返事、楽しみに待ってるね。
敬具 坂井瑞季』
いつもの花の写真と一緒についてきたのは、クリスマスツリーの、冬らしさを感じさせる写真だった。
……そっか。よくよく考えると、瑞季にはもう時間がない。冬休み、会いに行くか、行かないか……。場所自体は同じ県内だし、一人でも十分行けそうだった。けど、いざ会うとなると怖くて。
……結局、手紙は頻繁に出していたけど、なんだか勇気が出なくて俺は瑞季に冬休みの間会いに行くことは一度もなかった。