『拝啓 巡様。天の川が美しい季節となりましたがいかがお過ごしですか?この間、病院でも天の川見えたよ!……』
『拝啓 瑞季様。朝夕にやっと涼しさが感じられるようになりました。いかがお過ごしですか?俺は週明けの課題テストがやばいです(笑)……』
『拝啓 巡様。初秋の空は澄み切り、心地よい季節となりました。いかがお過ごしですか?女子にとってはおしゃれがしやすい季節です…!……』
『拝啓 瑞季様。読書の秋、いかがお過ごしでしょうか。俺はマンガの秋です(笑)……』


気付けばもう文通を初めてから半年が経ち、頻度も増えたので、瑞季からの手紙で手紙入れにしていた引き出しは溢れていた。
今日も瑞季からの手紙が来ている。母さんも文通していることを知っているみたいで、手紙が来ると俺の机の上に置いてくれる。最近はいつもに増して瑞季と手紙で話すのが楽しく感じられる。顔も知らない相手との文通だが、これが俺の日々の楽しみになっていた。そして、たまに想像する。もし、俺が瑞季に会いに行ったら……。けど、その度に思い出す。瑞季が文通をしているのはあくまで千門巡そのものではなく、千門”周”を演じている千門”巡”なのだと。名前は同じでも当然ながら容姿、性格は違うだろう。
「会いに行く、かぁ……」
もし、会いに行ったらどうなるか。まぁ今までの関係が崩れるだろうということは予想できる。瑞季はたまに「ねえ、会いたい」と言ってくる。けど俺は、瑞季にはきっと会えない―——。