そして封筒の中には書いてあるとおり、一枚の写真が入っていた。今回はすずらんの花が写っていた。俺は部屋に戻ると鞄を放り投げ、便箋を取り出す。そしてそこにまた筆を走らせた。
『拝啓 瑞季様。風薫る季節となりました。そちらはいかがお過ごしですか?写真ありがとう、もう五月かー、早いな。
瑞季は勉強とか順調?俺はもうやばくて……。昨日中間が終わったんだけど、自信ないです(笑)。
今回は俺も写真入れとくわ、何撮っていいかわかんないけど、頑張りました。瑞季は最近なんかはまってることある?俺はね、漫画を読むことかな。なんか、楽しくなってさ。今度会った時にはおすすめのやつ教える。またね
敬具 千門巡』
俺は手紙を書き終わったあと、スマホを自室の窓の外に向けた。偶然いい感じのグラデーションになっていた夕空を、そのスマホに収めた。それをコンビニでプリントアウトしてからまた郵便局に行き、切手を買って封をし、ポストに投函した。
喜ぶかな、瑞季。
顔も見たことがないけど、そんなことを考えると自然と口元が緩んだ。


それからというもの、俺と瑞季の文通は日常となっていた。毎回切手を買うので多少の出費はあったが、始めたら楽しくなって、気付いたら当たり前のように手紙を出している。瑞季と手紙を通して話していくうちに、瑞季のいろんなことが分かってきた。瑞季は同い年の女子らしく、趣味は裁縫。勉強はわりと得意で明るい性格だ。