俺は改めて文章を読んだ後、封筒を確認する。坂井瑞季(さかいみずき)、という人から送られてきたこの封筒の中には、手紙だけではなく一枚の写真が入っていた。
それは、桜と薄い色の青空、そして坂井瑞季、という人かと思われるピースの手が写っていたものだった。
「これは…俺宛て、じゃないよな」
そもそもの話、名前の漢字が違う。
送り先はもちろんこの住所、受取人の名前は千門周、となっている。でも俺の名前は苗字がたまたま一緒でも、千門"巡"(ちかどめぐる)だ。
しかし開けてしまったのでどうしようかと思い、俺はとりあえず、その辺を散策するという当初の目的も忘れ、自分の部屋にそれを持ち込んだ。
この手紙の中に入っていた写真をもう一度よく見てみる。ピースをする手は、透き通るように白く、その手にはよく観察すると、点滴の管がついている。
「この人、入院でもしてんのかな」
文章中に、『最後にもう一回だけ会えないかな』と書いてあるし、この人はどうしても”周”という人に会いたい事情があるのかもしれない。例えば?例えば……。ん?『最後に…?』もしかしてこの人……。
「…余命宣告でも、されてんのかな」