「……」
瑞季の話を聞いた僕は頭の中の情報を必死に整理していた。

『えーとね、私は、君が違う人だって、気付いて文通してたんだ』
瑞季は会話の始めにそう言った。なぜ、気付いたのか。そのことについて本人に尋ねると、
『だって、君の名前は”めぐる”くんだけど、私が前まで手紙を送ってたのは”しゅう”くんなんだもん』
と、衝撃の返事が返ってきた。”周”……。あー、確かに言われてみれば。
軽く放心状態になっている僕を見て瑞季はふふ、とまた小さく笑った。

「えっと、つまり瑞季は俺がその周くんじゃないって気づいてたけど、楽しかったからそのまま文通してた、と」
「うん、巡くんと妙に気が合っちゃって。なんか、騙すような形でごめん」
瑞季はこちらを向いて一言謝罪の言葉をかけてきた。
「ああ、いや。俺も騙してたようなもんだし」
用は、お互い騙しあっていたのと変わらないのだ。周くん、というのは前にあの家に住んでいた人の事で、引っ越していたことを知らなかったらしい。
なんだ、そういうことか。やっと合点のいった僕は「あー」と頷く。