「…よし」
着いた病院に俺は足を踏み入れる。病棟案内に従って、エレベーターで五階まで上がった。
「あのー、ここに入院している坂井瑞季さんの友人なんですけど…。面会しに来ました」
受付でそう言うと、看護師さんが瑞季の病室まで案内してくれた。
「……」
その、扉の向こうには瑞季がいる。俺は逸る気持ちを抑え、深呼吸をしてからコンコン、と扉をノックした。
「…はーい」
想像していたよりも少し高めの声がした。初めて聞く、瑞季の声。
俺は扉を開けて、その中に入った。

「……!」
「…巡、くん?」
ベッドの上に座る、一人の少女が俺のことを見上げる。透き通るように白い肌、鎖骨の下くらいまで伸ばした髪型、大きな目、それが、坂井瑞季だった。ってあれ、もしかして気づいてない?
「…はじめまして」
とりあえず俺はそう挨拶をする。きっと瑞季は「はじめまして」という言葉で気づくだろう。そう思ったのに――。
「…はじめまして」
帰ってきた言葉はそんな、思いもよらないものだった。
「え、どういうこと…?」
「ふふ、それはね――」