「なんか、ぼーっとしてたね。巡らしくないじゃん」
昼休み、転入した時にできた友達の白木茜(しらきあかね)が話しかけてくる。
「うん、まあちょっとね」
そう言いながら俺はさっき購買で買ってきたパンを一口かじる。
「何、話聞くよ」
「うん…俺さ、どうしたらいいのかな」
俺は初めて周りの人にこの事を話した。

「うーん…ていうか巡、そんなことしてたんだ。全然知らなかったけど。んで、巡としてはその”瑞季ちゃん”に会いたい、と」
「うーん…うん。けど、いいのかな。俺が会いに行って」
「それは、巡が決めることだから、俺が決めることじゃないけど、その子、余命一年なんだろ?しかも今年の春まで。なら、悔いのないようにしといた方がいいと思うけどね。俺は」
「そっか…」


俺は茜からの助言をもらって、また考えた。その間にも季節はどんどん進んでいき、気付けばまた春が来ようとしていた。
「拝啓 巡様。寒さの中にも春の足音が聞こえてきます。いかがお過ごしですか?巡くん、学校はどんな感じですか?もう少しで巡くんは三年生か。私は、三年生になれるのかな。その前に終わっちゃうかもしれないけどね。今年の桜も、見たいけどどうかな。やっぱり、会いには来てくれないかな。わがままだし、しつこいけど巡くんに会いたいな。春休みにでも、来てね。待ってる。
敬具 坂井瑞季」