「ねぇ、日和」
「…………」

名前を呼ばれたのに返事はできなかった。
重なる影が思考を止める。

「へへっ」

いたずらに笑う君は、夏の太陽よりも眩しい。

熱くなったのは夏のせい。
隠していたのは君のせい。
素直になれたのは夏のせい。
止められないのは君のせい。

「夏奈」
「ん?」
「───」
「なんて?」

まだ言えないのは俺のせい。
言わないほうが深く伝わることもある。
本当に大切なことは、聞こうとしないと聞けない。
でも、俺たちはもう繋がっている。
熱い夏が始まった。
それでも俺は、夏を待ちわびる。


【来い、夏】