「うっ、こりゃまたすげえ瘴気だな」
「とんでもないクソ大樹でございますね」
大樹の幹は見たこともないくらい太かった。
大人が10人くらい手を結んでも囲んでも、まだまだ余るくらいだ。
葉っぱは、そのほとんどが枯れ落ちていてしまっている。
太い枝も皮が剥がれていて痛々しかった。
おそらく、というか絶対に瘴気のせいだろうな。
「今にも倒れそうじゃないか。ん? なんか樹が動いているような気がするな」
俺たちが近くにいくと、大樹がユラユラしたように見えた。
まるで、何かの合図を送っているような……。
「きっと、ユチ様に浄化されるのを待っていたのでございます」
「ハハハ、そんなまさか、樹に意思があるわけでもあるまいし」
葉っぱにも幹にも、どす黒い瘴気がまとわりついている。
樹はボロボロでひび割れているところまである。
誰がどう見ても、今にも倒れそうな老木といった感じだ。
要するに、ほとんど枯れかけだった。
よくもまぁ、腐らずに生えているもんだ。
「この大樹はワシがデサーレチに来たときから、ずっとここに生えておりましたじゃ。どこから来たのか、誰にもわかりませぬ」
「へぇ~、確かに古そうな樹だよなぁ……見るからに樹齢がすごそうですよね」
大樹からはブシュゥ……ブシュゥ……と瘴気が噴き出している。
全体が瘴気の巣となってしまっていた。
近づくのもためらうほどだった。
デサーレチを覆っていた瘴気は、ここが原因だったんだろう。
「こいつを浄化すれば、もう新しい瘴気はやってこないだろうよ。よし、さっそく……」
ルージュが演説を始める前に、素早く聖域化させたい。
最近は、なんかスピードも上がってきたしな。
上手くいくはずだぞ。
これ以上晒されるのはやめてほしいところだった。
「皆さま方、お集まりくださいませ! ユチ様の御業のお時間でございますよ! これを見逃すと一生の損でございます!」
例のごとくルージュが演説してしまったので、領民たちが集まってくる。
お忍び浄化計画は早々に破綻した。
「生き神様の御業が何度も見られるなんて、至福の瞬間でございます!」
「これを見るために生きているようなもんだ!」
「ほんと、この村で生活していて良かったぜ!」
領民たちは大盛り上がりだ。
「おい、お前ら! いったん作業は中断だ! ユチ様のところに行くぞ! 俺たちを改心してくださった御業のお時間だ!」
アタマリまで部下を引き連れてやってきた。
領民たちと一緒に、ハイテンションで騒ぎまくる。
「見ているだけで心がキレイになるようだ! 病みつきになるな、これは!」
「ユチ様のお力は他では絶対に見れないぞ!」
「何て素晴らしい光景なんだろう! ここに来れて、俺たちは本当に運がいい!」
結局、村中の人達が集まってしまうこととなった。
仕方がない、そうと決まったらさっさとやるか。
世界樹の根元に行き、魔力を集中する。
<全自動サンクチュアリ>発動!
ゆっくり世界樹の周りを歩きだす。
瘴気が次々と苦しみだした。
『ギギ……ギ』
『ギギギギギ』
『ギッギギッギ』
幹の根元近くの瘴気はもちろん、葉っぱや枝にくっついているヤツらもブルブルしている。
俺の<全自動サンクチュアリ>は上空の方にも効果があるんだな。
地面だけかと思っていたが、そうでもなかったようだ。
『『ギギ……キャアアアアア!』』
俺のスキルに耐えられず、瘴気は消え去っていく。
そして、瘴気が消えたところからどんどん変化が現れた。
葉っぱは明るい緑になり、枝は丈夫そうになり、幹は立派な皮で覆われ始め……樹も生命力を取り戻しているのがわかる。
「あのデスドラシエルが輝きだしたぞ! 生き返っているんだ!」
「生き神様に出来ないことなんて、もはや何もないんじゃないか!?」
「神から与えられし聖なる力だー!」
領民たちもわあああ! と盛り上がっている。
ひとしきり歩いていたら瘴気は全部消えちまった。
「ユチ様、デスドラシエルをご覧くださいませ」
「こりゃぁ、さすがのワシもぶったまげたじゃよ!」
少し下がってデスドラシエルを見上げる。
大きな樹なので、近くでは全体が良く見えなかったのだ。
「こりゃぁすげ……」
幹は艶が出るほどの漆黒の皮で包まれ、葉っぱは鮮やかな緑色になっていた。
その全身はキラキラと輝いてる。
さっきまでの老木感はどこかに行ってしまったようだ。
<死の大樹デスドラシエル>
レア度:★12
非常に貴重な古代種の大樹。葉っぱ一枚一枚に不老不死の力が宿っている。何十年かに一度、特別な実をつける。その実からは精霊が生まれると言われている。
「レ・ア・度・12だって!? そんなことあり得るのかよ!?」
諸々のレア度の最高は10なのが常識だ。
それを2つも超えるなんて……さすがは古代の樹だ。
「「やったー! バンザーイ! 村の大樹が復活したぞ! これで村も安泰だ!」」
領民たちのボルテージはマックスだ。
デスドラシエルの周りで、どんちゃん騒ぎのお祭りが始まる。
彼らは本当に嬉しそうだ。
そりゃそうだよな、ずっと瘴気に汚染されていたのだ。
俺は領主の務めが果たせたようで、少しホッとしていた。
「では、ユチ様もマッサージの方を始めましょう。特製オイルとマットも持って参りましたので、準備万端でございます」
「こ、ここでやるの? せめて、服をだな……」
「ユチ様、こちらにちょうど良い具合に平らなスペースがございます」
領地が歓喜の渦に包まれていく中、俺はいつまでも服を着れないのであった。
――――――――――――――――
【生き神様の領地のまとめ】
◆“キレイな”死の大樹デスドラシエル
村で一番大きな樹。
推定樹齢は数千年。
瘴気に汚染され、瘴気の巣と化していた。
実態は古の世界樹の流れを引いているとんでもなく貴重な大樹。
瘴気にやられ死にかけていたところをユチに救われた。
何が実るかはお楽しみ。
「とんでもないクソ大樹でございますね」
大樹の幹は見たこともないくらい太かった。
大人が10人くらい手を結んでも囲んでも、まだまだ余るくらいだ。
葉っぱは、そのほとんどが枯れ落ちていてしまっている。
太い枝も皮が剥がれていて痛々しかった。
おそらく、というか絶対に瘴気のせいだろうな。
「今にも倒れそうじゃないか。ん? なんか樹が動いているような気がするな」
俺たちが近くにいくと、大樹がユラユラしたように見えた。
まるで、何かの合図を送っているような……。
「きっと、ユチ様に浄化されるのを待っていたのでございます」
「ハハハ、そんなまさか、樹に意思があるわけでもあるまいし」
葉っぱにも幹にも、どす黒い瘴気がまとわりついている。
樹はボロボロでひび割れているところまである。
誰がどう見ても、今にも倒れそうな老木といった感じだ。
要するに、ほとんど枯れかけだった。
よくもまぁ、腐らずに生えているもんだ。
「この大樹はワシがデサーレチに来たときから、ずっとここに生えておりましたじゃ。どこから来たのか、誰にもわかりませぬ」
「へぇ~、確かに古そうな樹だよなぁ……見るからに樹齢がすごそうですよね」
大樹からはブシュゥ……ブシュゥ……と瘴気が噴き出している。
全体が瘴気の巣となってしまっていた。
近づくのもためらうほどだった。
デサーレチを覆っていた瘴気は、ここが原因だったんだろう。
「こいつを浄化すれば、もう新しい瘴気はやってこないだろうよ。よし、さっそく……」
ルージュが演説を始める前に、素早く聖域化させたい。
最近は、なんかスピードも上がってきたしな。
上手くいくはずだぞ。
これ以上晒されるのはやめてほしいところだった。
「皆さま方、お集まりくださいませ! ユチ様の御業のお時間でございますよ! これを見逃すと一生の損でございます!」
例のごとくルージュが演説してしまったので、領民たちが集まってくる。
お忍び浄化計画は早々に破綻した。
「生き神様の御業が何度も見られるなんて、至福の瞬間でございます!」
「これを見るために生きているようなもんだ!」
「ほんと、この村で生活していて良かったぜ!」
領民たちは大盛り上がりだ。
「おい、お前ら! いったん作業は中断だ! ユチ様のところに行くぞ! 俺たちを改心してくださった御業のお時間だ!」
アタマリまで部下を引き連れてやってきた。
領民たちと一緒に、ハイテンションで騒ぎまくる。
「見ているだけで心がキレイになるようだ! 病みつきになるな、これは!」
「ユチ様のお力は他では絶対に見れないぞ!」
「何て素晴らしい光景なんだろう! ここに来れて、俺たちは本当に運がいい!」
結局、村中の人達が集まってしまうこととなった。
仕方がない、そうと決まったらさっさとやるか。
世界樹の根元に行き、魔力を集中する。
<全自動サンクチュアリ>発動!
ゆっくり世界樹の周りを歩きだす。
瘴気が次々と苦しみだした。
『ギギ……ギ』
『ギギギギギ』
『ギッギギッギ』
幹の根元近くの瘴気はもちろん、葉っぱや枝にくっついているヤツらもブルブルしている。
俺の<全自動サンクチュアリ>は上空の方にも効果があるんだな。
地面だけかと思っていたが、そうでもなかったようだ。
『『ギギ……キャアアアアア!』』
俺のスキルに耐えられず、瘴気は消え去っていく。
そして、瘴気が消えたところからどんどん変化が現れた。
葉っぱは明るい緑になり、枝は丈夫そうになり、幹は立派な皮で覆われ始め……樹も生命力を取り戻しているのがわかる。
「あのデスドラシエルが輝きだしたぞ! 生き返っているんだ!」
「生き神様に出来ないことなんて、もはや何もないんじゃないか!?」
「神から与えられし聖なる力だー!」
領民たちもわあああ! と盛り上がっている。
ひとしきり歩いていたら瘴気は全部消えちまった。
「ユチ様、デスドラシエルをご覧くださいませ」
「こりゃぁ、さすがのワシもぶったまげたじゃよ!」
少し下がってデスドラシエルを見上げる。
大きな樹なので、近くでは全体が良く見えなかったのだ。
「こりゃぁすげ……」
幹は艶が出るほどの漆黒の皮で包まれ、葉っぱは鮮やかな緑色になっていた。
その全身はキラキラと輝いてる。
さっきまでの老木感はどこかに行ってしまったようだ。
<死の大樹デスドラシエル>
レア度:★12
非常に貴重な古代種の大樹。葉っぱ一枚一枚に不老不死の力が宿っている。何十年かに一度、特別な実をつける。その実からは精霊が生まれると言われている。
「レ・ア・度・12だって!? そんなことあり得るのかよ!?」
諸々のレア度の最高は10なのが常識だ。
それを2つも超えるなんて……さすがは古代の樹だ。
「「やったー! バンザーイ! 村の大樹が復活したぞ! これで村も安泰だ!」」
領民たちのボルテージはマックスだ。
デスドラシエルの周りで、どんちゃん騒ぎのお祭りが始まる。
彼らは本当に嬉しそうだ。
そりゃそうだよな、ずっと瘴気に汚染されていたのだ。
俺は領主の務めが果たせたようで、少しホッとしていた。
「では、ユチ様もマッサージの方を始めましょう。特製オイルとマットも持って参りましたので、準備万端でございます」
「こ、ここでやるの? せめて、服をだな……」
「ユチ様、こちらにちょうど良い具合に平らなスペースがございます」
領地が歓喜の渦に包まれていく中、俺はいつまでも服を着れないのであった。
――――――――――――――――
【生き神様の領地のまとめ】
◆“キレイな”死の大樹デスドラシエル
村で一番大きな樹。
推定樹齢は数千年。
瘴気に汚染され、瘴気の巣と化していた。
実態は古の世界樹の流れを引いているとんでもなく貴重な大樹。
瘴気にやられ死にかけていたところをユチに救われた。
何が実るかはお楽しみ。