(結月さんか……!)

 凛は納得がいったように一つ頷くと、朔に声をかけた。

「朔、薬室(やくしつ)に確か熱に効く薬の貯蔵があったはずです、美羽さんが探していらっしゃったのですが、幾分私は今手が離せず、もしよろしければ美羽さんへご伝言をお願いできますか?」

 凛はわざと『朔』と呼び、友人の頼みであると朔を促した。
 
 一呼吸したあと、朔は凛に告げる。

「少し席を外す」

「はい、わかりました」

 朔も凛の気遣いをわかりながら、表情を変えることなくその場をあとにする。


(可愛い人ですね……)

 普段より早足の朔を見やりながら、微笑んだ。