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 凛が朔の執務室に到着すると、今朝はいなかった朔がすでに執務をはじめていた。

「おはようございます、朔様」

「ああ」

 いつものように言葉数少なく返事をすると、そのまま書き物を進めていく。


 一刻程二人で執務をしていた際、凛は朔の異変に気付いた。

(いつもより朔の執務ペースが遅い……)

 普段であればすでにほぼ執務を一段落終えるところが、まだ三割程度しか進んでいなかった。

(まさか、朔もどこか調子が悪いのでは……)

 主人の体調を心配し、書物を片付けるふりをしながら朔に近づいた。
 すると、そこには真っ白な紙に筆を持ったまま頬杖をつく朔の姿があった。
 さらに朔の足元には、大量のくしゃくしゃに丸められた紙が散乱している。
 
 横顔からでもわかる、放心状態だった。
 しばらくぶりに見た朔の人間らしく悩む姿に、凛は驚きを隠せなかった。
 と同時に、凛は朔がそうなる理由に気が付いた。