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 凛は結月と妖魔退治の当番の話をするために、結月の自室隣の和室へと向かって廊下を歩いていた。
 すると、凛の対面から美羽が急ぎ足で近づいてくる。
 不思議に思った凛は、美羽に声をかけた。

「美羽さん、そんなに急いでどうしました?」

「あぁ、凛様。結月様が高熱を出されておりまして……」

「結月さんが高熱……、具合は?」

「もう丸一日熱にうなされて目を覚まさないのです」

「丸一日ですか……」

 高熱で丸一日も目が覚めないのは、特に珍しいことではないが、結月の場合は先日力を暴走させ疲弊していた。
 少し不安が凛の中で感じられた。

「美羽さん、このこと朔様には?」

「お伝えしております、わかったと一言だけ仰せになり、職務に向かわれました」

「わかりました。また何か状態がわかれば連絡をください。よろしく頼みます」

「かしこまりました」

 美羽がお辞儀をすると、失礼します、と一言残し、再び足早に去っていった。

(結月さんが高熱ですか……少し心配ですね)

 少しの間、結月のいる自室を見つめると、凛は踵を返して職務に戻ることにした。