結月が目を覚ますと、ふかふかの赤い絨毯に寝ていた。
 見上げると向こうのほうには大きな椅子がある。

「っ?!」

 結月は自分の身体に違和感を覚え確認すると、腕と足を縛られていた。

「目が覚めたようですね」

「──っ!?」

 自分だけの空間だと思っていた結月の横には、かがんで顔色をうかがうよう覗き込む男の姿があった。
 かなりの剣技を持つ結月ですら、気配を感じ取ることに後れをとった。
 緩めの着物のような格好をしており、さらに覗き込むその顔は流れるような青い髪に濃紺の装飾が耳に光り輝いていた。
 結月はこれまでに見たことがないほどの綺麗な顔立ちに思わず息をのんだ。

「へえ……その子が例のあの子なんだ、意外と可愛いね」

 結月は驚いた。
 目の前の青い髪の男以外にも人がいた。しかも、見えるだけで三人いる。
 どういう状況か理解できない結月に、金髪の髪の男が言葉をつなげながら、結月にゆっくりと近づく。

「でも、この状況が理解できなくて言葉も発せないって感じだね。もう、だからもっと平和的に進めようっていったんじゃん、凛さん!」

「十分平和的ですよ。それにこれが一番早い方法ですし」

 『凛さん』と呼ばれた青い髪の男はそう告げる。
 先ほどから結月を覗き込んでいる男だ、

「平和的ってか、ほぼ誘拐かもな」

 そう言ったほうに顔を向けると、金髪の男の横に少し小柄そうで癖毛が目立つ男の子がいた。
 薄暗い部屋で少し離れたところにいるせいか、腰のあたりに赤い何かが光っているのがよく目立つ。

「誘拐はよくない……」

 ぼそっとしゃべりだした男は、小柄そうな男の子の少し後ろに立っている。
 部屋が薄暗いからなのか、黒い服装に黒い髪であまりよく見えない。

「まあ、とりあえず目的は達成しましたし、あとは朔様に任せるしかありませんよ」

「そういえば朔様はどうしたんですか?」

「まあ、朔様のことですしそろそろ……」

 そう凛が話していると、突然、その場の空気が変わった。
 その瞬間、話していた男たちが一斉にその場で跪き、頭を垂れた。
 そのわずか数秒後、結月でも感じ取れるほどの異質な何かを放った人物が、奥の空間に現れた──