朔の執務室で、朔と凛は職務に追われていた。
 二人は息の合った連携で職務を終わらせていく。
 朔の魂に傷がついているという事実は守り人に感情の違いはあれど、衝撃を与えた。
 共通して、『主人を守れなかった』という自責の念にかられていた。
 凛は頭の中で他の守り人たちの自分を責める姿が思い出された。

(……作戦を間違えたのは、私です)

 凛は自分自身を責め続けた。
 その時、書物を読んでいた朔が凛に声をかける。

「凛」

「はい、なんでしょう」

「あいつを茶屋にでも連れて行ってこい」

「……え?」

 凛は意外な言葉が返ってきたことに驚いて、執筆中の紙に炭をぽとりと落としてしまった。

「その意図をうかがってもよろしいでしょうか」

「ない」

 凛はまたもや朔の考えることがわからなかったが、ふと朔のほうを見た瞬間に意図に気づいた。

(目をそらしている……思い詰めている結月さんを思ってのことか……)

 朔の考えを読み取り、色よい返事をした。

「もちろん、朔様から外出の許可だけいただければ」

「許可する」

「かしこまりました。それでは、職務が終えましたので結月さんに言ってまいりますね」

「ああ、あいつも同じように思い詰める性格だからな」

「ふふ、そうですね」

 朔の珍しい惚気を聞いた凛は機嫌よく執務室を後にした。