涼風家屋敷跡──

「ここですね」

 結月と凛は涼風家の屋敷跡に到着した。
 結月にとってはあの地獄のような日以来この場所に来ていた。
 記憶が呼び覚まされ、胸の奥が締め付けられるようだった。

「大丈夫ですか?」

 凛が結月の様子を悟ったのか、具合は大丈夫かと聞く。

「大丈夫です」

 結月はそう答えた。
 立ち止まってはいけないと記憶を振り切り、辺りを見渡した。
 開けた場所にあるが、少し進むと各方面に森が広がっている。
 そういう場所に涼風家の屋敷はあった。

「こちらのはずです」

 結月は自分自身の幼い頃の記憶を手繰り寄せ、凛を連れてその場所へと向かう。

 やがて、森を抜けるとわずかに開けた空間が見えてきた。
 その中にひっそりと小さな蔵がある。

「あった……」

 二人は辺りを警戒しながらも、ゆっくりと蔵の中へと足を踏み入れた。

「こほ……こほ……」

 蔵の中はやはりしばらく人が入っていない様子だった。
 床はもちろん棚も埃がたまっている。
 大きな木箱や骨とう品に加えて書物も多くあった。

「凛さん、私は奥を見てくるのでここにある書物を見てもらっても大丈夫でしょうか」

「ええ、大丈夫です」

 結月と凛は二手に分かれて書物を読み漁った。