「さて、結月さんにお頼みがあってまいったのですが、よろしいでしょうか」

「はい、私もちょうど凛さんに頼もうとしていたことがあったのです」

「なんでしょうか」

 結月は自分が先に話していいのか戸惑うとその様子を察した凛が先に発言するように促した。
 少し会釈をし、結月は話し始めた。

「涼風家の屋敷跡に一緒に来ていただけないでしょうか?」

「よろしいですが、またなぜ?」

「力の暴走を抑える方法がないか知りたいんです。屋敷跡は燃えて何もないかもしれませんが、実は父と母、私だけの秘密の蔵が屋敷から少し離れた森の中にあります」

「──っ!」

 凛は初めてその情報を知った。
 涼風家が襲われた数年後、当主となった凛は妖魔退治の手がかりがないかと涼風家のあとを追っていた。
 しかし、当然屋敷は全滅、紙切れ一つ残っていなかった。
 まさか、別の場所に隠された蔵があったとは、凛は自分の知らない情報が手に入るかもしれないと期待を寄せた。

「私一人でいってもよかったのですが、守り人の皆様の妖魔退治の参考になる資料もあるかもしれませんので」

「ぜひ、ご一緒させてください。妖魔退治で役に立つのであれば大変ありがたいことです」

「私の話は済みました。次は凛さんの頼み事を聞かせていただけますか?」

「ああ……いえ、それはまた今度で大丈夫です。偶然にも結月さんの頼み事で少々叶いそうですし」

 結月が少し首をかしげる。
 凛はにっこりと笑い、その場を後にした。


 その後、朔に事情を説明して外出の許可をもらうと、翌日、結月と凛は涼風家の屋敷跡へと向かった──