「覚えていないのか?」

 蓮人が結月に対して問うと、結月はゆっくりと不安げにうなずいた。

「敵の消息は不明だ。だが、お前の力の覚醒を見て撤退した可能性が高い」

「力の覚醒……?」

「お前は『イグの行使者』涼風家の力を解放した。だが、扱いきれずに暴走した。記憶がないのはそのためだ」

「暴走……」

 結月は合点がいった。
 記憶がなくなる前、敵の前で怒りをきっかけに目の前が藍色になった。
 その瞬間身体が軽くなり、集中力が研ぎ澄まされた。
 その集中力が極限にいった先で記憶がぷつりと途絶えていた。

 守り人たちも真剣な顔でその事実を受け入れた。


(どうすれば暴走をしなくなる……?)

 結月はしばらく思案したが、解決策は当然出てこなかった──