薄暗く静かな屋敷──


「涼風の娘は『イグの行使者』として覚醒したようでした」

「そうか」

 朱羅は盃に入れた酒を飲みながら、部下の報告を聞く。

「しかし、力をまだ扱いきれていないようで、使い物になっていなさそうです」

「魁(かい)」

「はい」

 魁と呼ばれた男は主人である朱羅に近づき跪く。

「次は必ず仕留めろ、そのために”あれ”を使っても構わん」

「よろしいのですか」

「ああ」

(あれを使うということはやはり……)


 月の光だけが差し込むその部屋で、朱羅は再び酒を一口飲んだ──