朔は暗闇の中にいた。
 どこからも光が見えない中わずかに自分自身が光を放っていた。

(何者かの気配に気づき、寸でのところでかわしたが、違和感がある)

 朔はまだ自分の身に起こったことを正確には理解できていなかった。

 暗闇の中に光が見えてきた。
 その光のほうから何かと何かがぶつかる凄まじく甲高い声が聞こえる。

(結月……か)


 その光はやがて、大きく広がり朔を覆っていく。
 まぶしさに覆われたあと、気づくと宮廷の壇上で倒れていた。
 横には深い傷を負った琥珀がいる。

「琥珀」

 名を呼ぶとわずかに耳を動かす。
 朔は治癒の力を琥珀に放つと琥珀は目を開けて主人を見つめた。
 そっと朔は琥珀の顔をなでる。



 そして自分に向けられた異常なほどの敵意に身体を向ける。

 そこには藍色に全身を染め上げた結月の姿があった──