「な……なにその色……」

 朔の持つ剣は金色に輝いていた。
 そして驚くべきことにその刀は大太刀ほどの大きさへと変化した。
 変化した金色の刃の身幅は5寸ほどはありそうだった。
 朔はそれを一気に下から振り上げると大太刀から斬撃の波動が繰り出される。
 その波動は一直線に皐月に向かい、襲い掛かる。

「ぐはっ!」

 皐月はその斬撃を避けきれず、右肩に大きな傷を作る。

(あの太刀、まさか……)

「神器でも仕留め損ねたか」

 一条家の神器【天牙の太刀】──
 その太刀は普段は普通の太刀の姿をしているが、鞘を抜き一条家の当主たる資格のある者が意思を込めると大太刀へと変化する。

「神器……! それを壊せば朱羅様にお褒めいただけるっ!」

 すると、皐月の大鎌が再び瘴気を纏い、大きな渦が巻き起こる。
 朔は皐月の攻撃を待たずして追撃をかける。
 金色のその大太刀を今度は頭上まで持ち上げ、大きく振り下ろす。
 先程の斬撃とは比べ物にならないほどの斬撃が轟音と共に皐月へと向かう。
 しかし、皐月はその斬撃を受け流すと、一気に朔との距離をつめた。

 刃と刃が当たり、周囲に凄まじい風が巻き起こる。
 結月は朔に応戦しようとするが、先ほど柱で打った衝撃により肋骨を痛めていた。
 また、夜に受けた瘴気の影響で力の回復も遅れている。

「早く死ねよー!!」

「お前は力任せに鎌を振るしかない能無しか」

 朔はそういうとにやりと笑い、皐月を挑発した。

「そのすました顔が気にくわないんだよおっ!」

 皐月の大鎌の勢いが増す。

「朔様っ!!」

 押される朔に対してなんとか動こうとするが、立ち上がるのがやっとだった。

「……」

 朔は少し顔を歪めながら、一度横に飛び退き、詠唱とともに斬撃を二回繰り出した。
 その斬撃は皐月に向かう途中に大きな刃となって襲い掛かる。

「ぐっ!うわああーーーー!」

 大鎌で受け身を取るが、朔の斬撃が勝っていた。

 音を立て、大鎌は皐月からは遠く離れた場所に吹き飛ぶ。
 その隙を逃さず、朔は皐月の身体を大太刀で貫いた。

「ぐはっ!」

 皐月はその場に崩れ落ち、灰になり始める。

「くそっ……」

 そのまま完全に灰になって消えた。


「終わった……?」

 結月は気を失いそうになった。
 朔は一息つき、大太刀の変化を解く。


「朔さ……」

 戦闘が終わり、安心して結月が朔を見ると、朔の身体は刀に貫かれていた──