夜の闇を伝って、宮廷にまで届く凄まじい妖気。
 森一つ消し飛んだはずが音一つない。
 神経を集中させなくてもわかる、森だった中のある一点のみ強い妖気が集中している。

「朔様! ──っ! 結月さんもいらっしゃったんですね」

 駆けつけた凛が声をかける。
 その後も、実桜、瀬那、蓮人と集まってくる。
 誰もが状況の深刻さを理解していた。

「やばいんじゃねえの、この妖気……」

「ああ、感じたことない妖気の強さと禍々しさだ」

 蓮人と瀬那は東を見ながら目を細めてそう言う。

「お前たちで対処できるか?」

 朔が守り人たちに問う。

「お任せくださいませ」

 実桜の声とともに守り人全員が跪き、一礼した後に強い妖気を放つ場所へと向かっていった。

「私も……!」

 と、駆けだした瞬間に腕を力強くつかむ朔の手に引き留められた。

「朔様……?」

「お前はここにいろ」

「でもっ!」

「あれだけの瘴気に侵されていた身体だ。今それ以上の妖気にあてられるのはきつい」

 結月は朔に言われて自分の身体がかなり弱っていることに気づいた。
 頭がぼーっとし、身体に力が入らないのがわかる。

「あいつらを信じろ」

「……はい」