「え……これをわたくしと美羽に……ですか?」

「うん! いつもお世話になっているお礼!」

 結月が渡したのは、加須底羅(カステイラ)だった。

「南蛮から届いたみたい。朔様がくれたものこっそり持ってきたの」

 結月の目の前で普段とは違い、目を輝かせている二人。
 だが、いけないとばかりに少し頭を左右に振る。

「なりません、私たちがそのような高価なものいただけません」

 自分を律し、結月にそう伝える。

「来週、二人が15歳の誕生日だって聞いたの。だから、受け取ってもらえないかな?」

 そういうと結月はじっと二人を見つめる。

「……いいんでしょうか……」

「うん!」

 二人はそっと結月から加須底羅を受け取ると遠慮しがちに食べた。

「っ!あまい……」

「っ!おいしい……」

 顔をほころばせて喜ぶ様子をみて、結月もほほえましくなる。

「永遠(とわ)くん、美羽ちゃん、お誕生日おめでとう」

 きちんと自分たちの誕生日祝いをされたことは初めてだったため、その言葉にこそばゆさと嬉しさを感じた二人。

「永遠(とわ)とお呼びくださいませ」
「美羽とお呼びくださいませ」

 二人の声が重なる。
 結月は驚きながらもうなずいた──